3. パルスQ&AパルスオキシメータQ&A|困ったときどうする? 受診・判断の考え方

はじめてパルスオキシメータを購入された方、これから購入を検討されている方、そしてコロナ後は引き出しにしまったまま…という方へ。
まず知っておきたい基礎を、Q&A形式でやさしく解説します。
受診や相談の判断は、数値だけで決めないのが基本です。
このパートでは「症状優先持続性いつもの値との比較」を軸に、よくある4つの疑問にお答えします。

パルスオキシメータ+プレチスモグラム

Q9. 受診や相談の目安を知りたい。

症状が強いときは数値に関係なく受診・相談を
息苦しさが強い/呼吸が荒い胸痛顔色不良ぼんやりする など → 数値に関係なく直ちに受診や相談(#7119 等)。

  • 90%未満が持続する/すぐに戻らない → 医療機関へ。
  • 90〜93%が繰り返し出る → 条件を整えて再測(正しい測定のしかた)。改善しなければ相談。
  • いつもの値より明らかに低い(慢性呼吸器疾患を含む) → 体調とあわせて早めに相談。

「数値の見方(目安表)」も合わせてご参照ください。

Q10. SpO2が正常なら体内の酸素は十分?

目安としては十分ですが、“完全保証”ではありません。SpO2血液中ヘモグロビンと酸素との結合の推定値で、酸素を全身へ届ける過程の一部分を見ています。

正常SpO2でも見落としやすい点

  • 循環(心拍出量)が低下 → 酸素の“運び”が足りなくなります。
  • 貧血 → 飽和度が正常でも総酸素量が少なく十分ではありません。
  • その他、一酸化炭素中毒など → SpO2実際より高く出ることがあります。

結論:SpO2は有用な“目安”。ただし症状・体調の変化とあわせて判断しましょう。

Q11. 息苦しくてもSpO2が正常な場合は?

SpO2と息苦しさは、関連しているときと、そうでない時があります。
それは、息苦しいということの原因に関係しているからです。
息苦しさの原因には以下の場合があります。

  • 気道の問題:ぜん息の初期、咳喘息、上気道狭窄など(早期はSpO2が保たれることがあります)。
  • 心臓・血液・循環系の問題:貧血、頻脈・不整脈、脱水、心不全初期など(飽和度は正常でも運べる酸素量が不足)。
  • 体力・からだの使い方:運動不足や体力低下、肥満で、動いたときに息切れが強く出やすい。
  • 過換気(不安・緊張):呼吸が浅く速くなり、手足のしびれや胸の違和感を感じることがあります。

まず試すこと(セルフチェック)

  • 姿勢を楽にして、ゆっくり吐いてから吸う(呼吸を整える)。
  • 測定条件を整えて再測正しい測り方拍動波形の安定→20〜30秒待ち→同じ値を2回確認。
  • 脈拍・体温も一緒にチェック(発熱や頻脈は息苦しさの原因になります)。

受診・相談の目安(数値に関係なく症状優先)

  • 息苦しさが強い/悪化している胸痛顔色が悪いぼんやりする → ためらわず#7119等に相談、必要に応じて受診。
  • 息苦しさが繰り返す/長引く → 心・肺・血液(貧血)などの評価を検討。
Q12. 正しく測っても低いが息苦しくない。問題ない?

要注意です。とくに90%未満の低値が持続する場合は、自覚症状が乏しくても医療機関への相談を検討してください。
SpO2が低いのに息苦しさが少ない」状態は、COVID-19が流行したときによく耳にしたと思われますが、いわゆるサイレントハイポキシア(沈黙の低酸素)やハッピーハイポキシア(幸せな低酸素)と呼ばれる状態で、見逃しにつながることがあります。

まず確認すること(測定ミスを除外)

それでも低いときの考え方

  • 既往歴がない方(元来健康)迷わず早めに相談・受診をおすすめします。
  • いつもの値と比較慢性の呼吸器疾患がある方は主治医からの指示レンジが最優先です(一般的な目安は数値の見方参照)。
  • 下がり続けていないか:一時的に回復しても、じわじわ低下する場合は早めに相談
  • 体調の変化:食欲・発熱・咳・だるさ・顔色など、数値以外の変化をメモしておくと受診時に役立ちます。

受診・相談の目安(症状が乏しくても)

  • 90%未満が持続する/すぐに戻らない。
  • 90〜93%が繰り返し出る、またはいつもの値より明らかに低い
  • 心配な変化がある(発熱が続く・脈が速い・食事や水分が取れない など)。

かかりつけ医がいない場合は、地域の救急安心センター(#7119)などの相談窓口をご利用ください。症状が強い・急に悪化した場合は119番へ。

関連:Q6:数値が揺れる時は?Q7:測定に影響するもの数値の見方(目安表)

参考:日本呼吸器学会「パルスオキシメータ ハンドブック(一般向け)」

投稿者名
Noguchi Hiroyuki 臨床工学技士

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