はじめてパルスオキシメータを購入された方、これから購入を検討されている方、そしてコロナ後は引き出しにしまったまま…という方へ。
まず知っておきたい基礎を、Q&A形式でやさしく解説します。
受診や相談の判断は、数値だけで決めないのが基本です。
このパートでは「症状優先+持続性+いつもの値との比較」を軸に、よくある4つの疑問にお答えします。

Q9. 受診や相談の目安を知りたい。
症状が強いときは数値に関係なく受診・相談を
息苦しさが強い/呼吸が荒い、胸痛、顔色不良、ぼんやりする など → 数値に関係なく直ちに受診や相談(#7119 等)。
- 90%未満が持続する/すぐに戻らない → 医療機関へ。
- 90〜93%が繰り返し出る → 条件を整えて再測(正しい測定のしかた)。改善しなければ相談。
- いつもの値より明らかに低い(慢性呼吸器疾患を含む) → 体調とあわせて早めに相談。
「数値の見方(目安表)」も合わせてご参照ください。
Q10. SpO2が正常なら体内の酸素は十分?
目安としては十分ですが、“完全保証”ではありません。SpO2は血液中ヘモグロビンと酸素との結合の推定値で、酸素を全身へ届ける過程の一部分を見ています。
正常SpO2でも見落としやすい点
- 循環(心拍出量)が低下 → 酸素の“運び”が足りなくなります。
- 貧血 → 飽和度が正常でも総酸素量が少なく十分ではありません。
- その他、一酸化炭素中毒など → SpO2が実際より高く出ることがあります。
結論:SpO2は有用な“目安”。ただし症状・体調の変化とあわせて判断しましょう。
Q11. 息苦しくてもSpO2が正常な場合は?
SpO2と息苦しさは、関連しているときと、そうでない時があります。
それは、息苦しいということの原因に関係しているからです。
息苦しさの原因には以下の場合があります。
- 気道の問題:ぜん息の初期、咳喘息、上気道狭窄など(早期はSpO2が保たれることがあります)。
- 心臓・血液・循環系の問題:貧血、頻脈・不整脈、脱水、心不全初期など(飽和度は正常でも運べる酸素量が不足)。
- 体力・からだの使い方:運動不足や体力低下、肥満で、動いたときに息切れが強く出やすい。
- 過換気(不安・緊張):呼吸が浅く速くなり、手足のしびれや胸の違和感を感じることがあります。
まず試すこと(セルフチェック)
- 姿勢を楽にして、ゆっくり吐いてから吸う(呼吸を整える)。
- 測定条件を整えて再測:正しい測り方/拍動波形の安定→20〜30秒待ち→同じ値を2回確認。
- 脈拍・体温も一緒にチェック(発熱や頻脈は息苦しさの原因になります)。
受診・相談の目安(数値に関係なく症状優先)
- 息苦しさが強い/悪化している、胸痛、顔色が悪い、ぼんやりする → ためらわず#7119等に相談、必要に応じて受診。
- 息苦しさが繰り返す/長引く → 心・肺・血液(貧血)などの評価を検討。
Q12. 正しく測っても低いが息苦しくない。問題ない?
要注意です。とくに90%未満の低値が持続する場合は、自覚症状が乏しくても医療機関への相談を検討してください。
「SpO2が低いのに息苦しさが少ない」状態は、COVID-19が流行したときによく耳にしたと思われますが、いわゆるサイレントハイポキシア(沈黙の低酸素)やハッピーハイポキシア(幸せな低酸素)と呼ばれる状態で、見逃しにつながることがあります。
まず確認すること(測定ミスを除外)
- 測り方を再チェック:正しい測定のしかたに沿って、遮光・保温・静止・装着を見直し。
- 波形の安定を確認:拍動波形(プレチスモグラム)が整ってから20〜30秒待ち、同じ値を2回確認。
- 別の指/可能なら別の機器でもう一度(可能なら)測ってみる。
それでも低いときの考え方
- 既往歴がない方(元来健康):迷わず、早めに相談・受診をおすすめします。
- いつもの値と比較:慢性の呼吸器疾患がある方は、主治医からの指示レンジが最優先です(一般的な目安は数値の見方参照)。
- 下がり続けていないか:一時的に回復しても、じわじわ低下する場合は早めに相談。
- 体調の変化:食欲・発熱・咳・だるさ・顔色など、数値以外の変化をメモしておくと受診時に役立ちます。
受診・相談の目安(症状が乏しくても)
- 90%未満が持続する/すぐに戻らない。
- 90〜93%が繰り返し出る、またはいつもの値より明らかに低い。
- 心配な変化がある(発熱が続く・脈が速い・食事や水分が取れない など)。
かかりつけ医がいない場合は、地域の救急安心センター(#7119)などの相談窓口をご利用ください。症状が強い・急に悪化した場合は119番へ。
関連:Q6:数値が揺れる時は? / Q7:測定に影響するもの / 数値の見方(目安表)
参考:日本呼吸器学会「パルスオキシメータ ハンドブック(一般向け)」
投稿者名
Noguchi Hiroyuki 臨床工学技士
