妊婦、未熟児ー酸素投与の注意すべき疾患、副作用・合併症その5

母体急変時の初期対応の一つとして、酸素投与を行います。
たとえば、出血により循環血液量が減少すると、赤血球容積の減少に伴い末梢組織への酸素供給が減少し、嫌気性代謝によって組織障害がもたらされるため、リザーバ付きマスクにより、10〜15L/分で投与します。SpO2の異常や呼吸苦がなくても、まずは酸素投与を行います。4)

一方、低出生体重児、新生児においては、酸素濃度は必要最小限に止めることとされます1)。保育器中の酸素濃度は、動脈血酸素分圧を測定して60〜80 Torrの範囲を保つことが求められます。もし高いと、未熟児網膜症を引き起こすことがあります。
また、超低出生体重児においては、酸素の投与期間が長いほど肝芽腫発生率が高くなるとの疫学的調査報告があります1)

さらに、新生児の蘇生においては、100%酸素ではなく、空気を使用して開始することが最善とされています2)

参考資料・文献

1)日本薬局方 酸素添付文書, https://clinicalsup.jp/jpoc/DrugInfoPdf/00065157/  ,2025.2閲覧

2)新生児の蘇生(NCPR),日本周産期・新生児医学会, https://www.jspnm.jp/ , 2025.2閲覧

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