はじめに
前編では、HFTの基本構成であるブレンダー+流量計タイプやベンチュリータイプ、加温加湿器の重要性について解説しました。
後編では、これらの機器構成とは異なり、すべての機能を1台にまとめた「専用HFT装置(ジェネレータータイプ)」について解説します。装置の特徴や使い分け、使用時の注意点など、実践で役立つポイントを紹介します。
1. HFT専用装置とは?
HFT専用装置は、酸素濃度の調整、流量の発生、加温加湿の管理といった機能を1台にまとめた“オールインワン構造”の装置です。
特に、以下のような点で初心者にも扱いやすいというメリットがあります:
- 操作がシンプルで設定が直感的
- 複数の機器を接続・調整する必要がない
- 小児から成人まで幅広く対応


2. 主な装置と特徴
装置名 | 製造元 | 特徴 |
AIRVO 2 | Fisher & Paykel社 | 温度、流量、酸素濃度が一目でわかる見やすいディスプレイ。 |
Inspiredフロー | Inspired Medical社 | 小型・軽量で静か、お手入れが簡単。 |
3.押さえておきたい3つのポイント
項目 | 説明 |
流量を自力で発生 | 内部タービンによって酸素と室内気を混合し、設定した流量を自動で供給する |
酸素濃度の調整 | 外部酸素を流量に応じて注入する |
加温加湿が内蔵 | 加温加湿器が本体に一体化しており、外付け装置の準備が不要 |
4. ブレンダータイプとの比較
ブレンダー+流量計 | 比較項目 | 専用HFT装置 |
酸素+空気配管 | 酸素供給 | 高圧酸素+室内気 |
外部供給 | 流量発生 | 内部モーターで自動発生 |
ブレンダーで直接設定 | FIO₂調整 | フローと酸素流量の組合せで調整 |
外付け加温加湿器が必要 | 加温加湿 | 内蔵または一体型で管理可能 |
機器が複数、やや複雑 | 操作性 | 本体操作のみで簡単に管理可能 |
5. 使用時の注意点(専用HFT装置)
- 酸素濃度調整方法:FIO₂は設定フローと酸素流量のバランスで決まるため、フローを変更した際には酸素濃度も変化することに注意。
- 装置の設置場所:水平で安定した場所に設置すること。加湿チャンバーの水が回路に流れ込まないように注意。
- 蒸留水の使用:加湿チャンバーに37℃以上の水を注がない。温度センサーや加湿機能に影響を及ぼすおそれあり。
6. アラームについて
専用HFT装置には、ブレンダータイプにはない、いくつかのアラームが備わっており、安全性を高めている。ここではアラームの種類について、表にした。
🌊 加温加湿系(水まわり)のアラーム
アラーム名 | 内容 | 主な原因 |
水位低下アラーム(Low Water Level) | チャンバーの水位が一定以下に低下したことを知らせる | 加湿器チャンバーに補水されていない、ウォーターパックの装着不良など |
水位高アラーム(High Water Level)※一部機種 | 水位が規定値以上に達したことを知らせる | チャンバーの排水不良、センサーの異常など |
チャンバー未接続アラーム | 加湿チャンバーが正しく装着されていない | 接続ミス、チャンバーの ズレなど |
🚫 回路系(閉塞やリーク)のアラーム
アラーム名 | 内容 | 主な原因 |
閉塞アラーム(Occlusion) | カニューレや回路に流量の障害がある | カニューレの折れ、結露による詰まり、回路接続の不備など |
高圧アラーム(High Pressure) | 回路内の圧が許容範囲を超えた | 閉塞とほぼ同様の原因、または患者側の過剰呼気抵抗など |
リークアラーム(Leak)※一部機種 | 意図しない空気の漏れがある | 接続部の緩み、カニューレが鼻腔に合っていない、加温加湿回路の破損など |
おわりに
HFT専用装置は、現場の使いやすさや一貫性のある管理を可能にする一方で、装置ごとの特徴や注意点を把握しておくことが重要です。
前編とあわせて、これらの知識がHFTを安全かつ効果的に活用するための一助となれば幸いです。
なお、今回取り上げた2機種以外に、クリーンフローLumis HFT(フクダ電子)もある。この機器は在宅HFTで用いられる専用装置の一つで、静穏性に優れている。
この記事は、2025年3月までの情報をもとに作成した。必要に応じて随時アップデートする。
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