はじめに
「ハイフローセラピーって最近よく聞くけど、実はちゃんと理解できていない…」
そんな声を、医療現場からよく耳にします。
本記事は、「いまさら聞けないシリーズ」として、ハイフローセラピー(High Flow Therapy)の基本をおさらいし、
その名称の違いや歴史、なぜここまで広がったのか?という背景まで、やさしく解説していきます。
ハイフローセラピーとは?
ハイフローセラピー(High Flow Therapy)は、鼻カニュラを通して高流量の酸素を加温・加湿して投与する非侵襲的呼吸補助療法です。
現場では以下のようにさまざまな呼び方をされることもあり、ややこしく感じるかもしれません。
- 高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)
- ネーザルハイフロー(Nasal High Flow, NHF)
- 商品名での呼称(例:ネーザルハイフロー、Vapothermなど)
現在も統一名称は確立されておらず、使用機器や施設の文化によって呼び方が異なるのが実情です。
歴史からひも解くHFTの進化
ハイフローセラピーは比較的新しい酸素療法であり、その普及の歴史は次のようにたどれます。
• 1990年代: CPAPや低流量酸素療法とは異なる、新たな呼吸補助技術の研究が始まる。
• 2000年代初頭: 新生児集中治療室(NICU)において、高流量酸素療法の有効性が注目される。
• 2006年: 米国Vapotherm社がHFNCデバイスを開発(写真)。成人・小児への使用が始まる。

• 2010年前後: 臨床研究で成人の呼吸不全にも効果があることが示され、世界的に普及。
• 2011年: 急性呼吸不全、COPD、術後ケアなどに活用され、国内でも広く導入が進む。
なぜここまで広まったのか? 普及の理由を整理
従来の酸素療法と比べて、ハイフローセラピーが注目された理由には、以下の点が挙げられます。
• 患者の快適性が高い
→ マスクやNPPVに比べて装着感が軽く、話す・食事するなどの日常動作を妨げない。
加温・加湿酸素による呼吸のしやすさ
→ 粘膜の乾燥を防ぎ、呼吸仕事量を軽減。
非侵襲的な管理が可能
→ 人工呼吸器やNPPVよりも身体的負担が少なく、導入のハードルが低い。
COVID-19パンデミックによる急速な普及
→ 2020年以降、重症呼吸不全の管理手段として急速に導入され、存在感を高めた。
呼び方がたくさんある? HFTの名称整理
医療現場で混乱しやすいポイントのひとつが、「呼び方の違い」です。
ここでは、一般的な名称と製品名をわかりやすく整理します。
一般的な呼称
- HFT(High-Flow Therapy):広く使われる総称
- HFOT(High-Flow Oxygen Therapy):酸素療法にフォーカスした言い方
- NHF(Nasal High-Flow):鼻カニュラを使用することを強調
- HFNC(High-Flow Nasal Cannula):機器名としても広く認知
メーカーや製品に関連する呼称
一部の医療機器メーカーでは、独自の名称を使用しています。
- Optiflow™(Fisher & Paykel Healthcare社のHFNCシステム)
- Vapotherm®(Vapotherm社の高流量酸素療法デバイス)
現場では商品名が通称になっていることも多いため、使用している機器に応じた使い分けが大切です。
おわりに
ハイフローセラピーは、今や多くの現場で呼吸管理の選択肢のひとつとなっています。
しかし、その歴史や名称、特徴については、意外とあいまいなまま使っている方も少なくありません。 この記事が、HFTの理解を深め、現場での実践に自信を持つ一助になれば幸いです
2025年3月現在
次は、第2回従来の酸素療法との違い ― ハイフローセラピーの優位性とは?
というタイトルで、従来の酸素療法との違いを確認しましょう。
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