【はじめに】
呼吸不全に対して酸素療法は不可欠な治療手段ですが、過剰投与はむしろ害を及ぼす可能性があります。
ここでは、酸素療法における注意すべき副作用・合併症について整理します。
酸素中毒
高濃度酸素を長時間吸入すると、肺障害(酸素中毒)を引き起こすリスクがある。
肺胞上皮障害や中枢神経系異常が進行する恐れがある。
特に高濃度酸素下では、吸入時間に応じて無気肺などのリスクがある。
重要臓器血流低下
急性冠症候群(ACS)や脳卒中、妊婦(胎児)では、高濃度酸素投与が血管収縮を引き起こし、重要臓器血流を低下させる危険があるため、本来の治療効果が得られず、むしろ病態悪化を助長する場合もある。
CO₂ナルコーシス
COPDなど慢性高炭酸ガス血症の患者では、常時CO2が高いため、高濃度酸素によって呼吸抑制が生じ、CO₂貯留・意識障害(CO₂ナルコーシス)を引き起こすリスクがある。
酸素投与時には、目標SpO₂を低め(例:88〜92%)に設定し、慎重に管理する必要がある。
SpO₂100%で管理しない理由
酸素投与によってSpO2は上昇するが、100%を超えることはない。
しかし、PaO2は上昇を続ける可能性がある。
そんなとき、病態の変化に伴ってPaO2の低下が起きたとしても、例えばPaO2が150Torrを超えていた場合、SpO2に変化が見られず、病態の変化をモニタリングすることができない。
したがって、過剰酸素状態により、治療介入が遅れるリスクがある。

【まとめ】
酸素療法は適切な管理を前提に行われるべき治療ですが、過剰投与は酸素中毒、重要臓器血流低下、CO₂ナルコーシスといった重大なリスクを伴います。
また、過剰な酸素投与は、病態の変化のモニタリングを妨げるリスクがあります。
患者個々のリスクを十分に評価し、必要最小限の酸素投与を心がけることが、安全な治療に直結します。
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