【はじめに】
簡易酸素マスクは、口と鼻をマスクで覆い、酸素供給源から通常5〜8L/分程度の酸素を流して使用します。呼吸不全患者に対する中濃度酸素療法に広く用いられる、取り扱いがシンプルなデバイスです。
特徴
簡易酸素マスクでは、患者が必要とする吸気流量より低い酸素流量が供給されるため、不足分の吸気はマスク容量内に溜まったガスや、マスクの換気孔から取り入れられる室内空気で補われます。
これらが酸素供給チューブからの酸素と混合され、中濃度の酸素が患者に供給されます。
マスクの容量は、サイズやメーカーにより異なりますが、概ね150〜180mLです。
酸素流量と吸入酸素濃度の目安
酸素流量(ℓ/分) | 吸入酸素濃度の推定値(%)※ |
5〜6 | 40 |
6〜7 | 50 |
7〜8 | 60 |

※患者の呼吸状態により変動します。
文献1より引用
使用方法
呼気時には、患者が呼出したガスがマスクの換気孔から排出されます。
マスク内に留まったガスを確実に排出させるためには、5L/分以上の酸素流量が必要です。
5L/分未満で使用すると、再呼吸による動脈血二酸化炭素分圧(PaCO₂)の上昇リスクがあり、注意が必要です。
使用中の観察ポイント
- マスクの装着圧を適切に調整し、顔面神経や視神経への影響、皮膚トラブルを防止します。
- 飲食時にはマスクを外す必要があり、その間に動脈中酸素飽和度(SpO₂)の低下リスクがあるため、モニタリングが重要です。
注意点
- 酸素流量は必ず5L/分以上に設定すること
- 長時間装着による皮膚障害を防ぐため、定期的なスキンチェックを行うこと
- マスクを外している間の低酸素血症に注意し、必要に応じて酸素再投与を速やかに行うこと
【まとめ】
簡易酸素マスクは、簡便な操作性と中濃度酸素供給が可能な優れたデバイスです。
しかし、適切な酸素流量の維持、フィット管理、低酸素血症の予防が、安全かつ効果的な使用に不可欠です。
参考文献
- 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会 酸素療法マニュアル作成委員会,日本呼吸器学会 肺生理専門委員会編:酸素療法の実際.酸素療法マニュアル,メディカルレビュー社,東京,2017,
- スキルアップセミナー 酸素療法の基礎からハイフローまで, 野口裕幸, 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌, 32(2024)3号p.288-292
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