はじめに
ベンチュリーマスクは、設定した酸素濃度(FiO₂)を高精度に維持しながら、
患者に安定した酸素供給を行うことができる高流量システムの一つです。
この記事では、ベンチュリーマスクの特徴と使い方、実際の適応場面まで体系的に整理して解説します。
ベンチュリーマスクとは(図1)
ベンチュリーマスクは、患者の呼吸パターンに影響されず、一定濃度の酸素を供給できるデバイスです。
ベンチュリー効果を利用して、酸素と室内気(空気)を適切な割合で混合し、安定した酸素濃度を提供します。
(図1)

設定できる酸素濃度と流量
ベンチュリーマスクでは、以下のような酸素濃度設定と流量管理が可能です(表1)。
カラーコード | 酸素濃度 | 指定酸素流量(L/分) | 総流量(L/分) |
ブルー | 24% | 4 | 26 |
イエロー | 28% | 4 | 26 |
ホワイト | 31% | 6 | 35 |
グリーン | 35% | 8 | 40 |
レッド | 40% | 8 | 40 |
オレンジ | 50% | 12 | 50 |
なお、ダイリュータで設定できる酸素濃度はメーカーにより異なります。(表1)
ベンチュリーマスク使用時の注意点
- 総流量が患者の最大吸気流量を完全に上回らないことがある
- 吸気抵抗を感じ、呼吸困難感を訴える場合がある
- マスク・チューブ接続不良により酸素濃度が不安定になることがある
このような場合には、
マスクのフィット感を調整するか、
高流量供給が可能なデバイスへの切り替えを検討します。
ベンチュリーマスクの適応場面
- 軽〜中等度の呼吸不全患者
- 呼吸パターンが不安定な患者
- 酸素濃度管理を厳密に行う必要がある患者
- (例:Ⅱ型呼吸不全(高炭酸ガス血症)患者、CO₂ナルコーシスリスクのある患者)
まとめ
ベンチュリーマスクは、
- FIO₂を高精度に維持できる
- 患者の呼吸パターンに影響されにくい
- 特にⅡ型呼吸不全患者において安全に使用できる
というメリットを持つ高流量酸素療法の重要な選択肢です。
次章では、【ネブライザー付き酸素吸入装置】について解説していきます。
コラム:ベンチュリーマスクの仕組み
ベンチュリーマスクは、「ベンチュリー効果(Venturi effect)」を利用して酸素と室内気を混合します。
狭い部分を高速で酸素ガスが流れると、圧力が下がり周囲の空気が引き込まれることで、設定された酸素濃度が得られます。
この原理により、患者の呼吸努力に左右されず、
設定したFIO₂を安定供給することが可能になります。

参考文献
- 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会 酸素療法マニュアル作成委員会,日本呼吸器学会 肺生理専門委員会編:酸素療法の実際.酸素療法マニュアル,メディカルレビュー社,東京,2017,
- スキルアップセミナー 酸素療法の基礎からハイフローまで, 野口裕幸, 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌, 32(2024)3号p.288-292
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