第3回:酸素療法の適応

【はじめに】

Ⅰ型呼吸不全やⅡ型呼吸不全など、酸素療法が必要と判断される病態は、患者のさまざまな状態に応じて慎重に考慮する必要があります。
ここでは、一般的な適応基準と、代表的な疾患・病態について整理します。

【酸素療法が適応となる基準】

酸素療法は、動脈血酸素分圧(PaO₂)が60 Torr未満、あるいは経皮的動脈血酸素飽和度(SpO₂)が90%未満の場合に検討されます。
※この基準は、通常、安静時に大気吸入下で測定された値を基準とします。

【酸素療法が考慮される主な病態】

  • 低酸素血症を引き起こす疾患
    (例:肺炎、肺水腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)など)
    ➔ ガス交換障害により血中酸素濃度が低下する。
  • 循環不全を伴う疾患
    (例:不整脈、心筋梗塞、心不全など)
    ➔ 心拍出量の低下により末梢への酸素供給が不足する。
  • 血液酸素運搬能の低下を伴う状態
    (例:貧血、外傷・手術による大量出血など)
    ➔ 酸素を運搬する能力そのものが低下する。
  • 神経学的異常による判断力低下
    (例:混迷、意識消失など)
    ➔ 中枢神経障害により呼吸調節機能が低下する可能性がある。

【まとめ】

酸素療法の適応は、単に数値基準を満たしているかどうかだけでなく、患者の全身状態や臨床所見を総合的に判断して決定する必要があります。
特に、慢性呼吸器疾患(例:COPDなど)を有する患者では、酸素投与により二酸化炭素(CO₂)貯留を引き起こすリスクもあるため、慎重な管理が求められます。

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