【はじめに】
ネブライザー付き酸素吸入装置は、呼吸状態の悪化した患者さんに対して、
酸素投与と同時に十分な加湿を行うことができる重要なデバイスです。
特に、術後の抜管直後や、一時的な呼吸サポートが必要な場面では、
気道乾燥を防ぎ、呼吸器合併症のリスクを低減する目的で使用されます。
本記事では、この装置の基本的な構造と仕組みについて、わかりやすく整理して解説します。
ネブライザーとは?
ネブライザーとは、液体を微細な霧状(エアロゾル)にして吸入させる装置のことを指します。
一般的には吸入薬剤投与に使われることが多いですが、
酸素療法においては、呼吸ガスを加湿するために使用されます。
乾燥した酸素ガスを吸入し続けると、気道粘膜が傷つき、
分泌物の性状悪化や感染症リスクが増加するため、
酸素投与と加湿は不可分な関係にあります。
ネブライザー付き酸素吸入装置の構造
ネブライザー付き酸素吸入装置では、以下の流れでガスが供給されます。
- 酸素が装置内に供給される
- ベンチュリー効果によって高速流が発生し、室内気が引き込まれる
- 酸素と室内気が加湿されながら混合される
- 加湿された酸素・空気混合ガスが患者に供給される
この仕組みにより、酸素濃度(FIO₂)を一定に保ちながら、加湿されたガスを安定供給できることが特徴です。

ベンチュリーマスクとの違い
ベンチュリーマスクも、同じくベンチュリー効果を利用して
酸素と室内気を混合しますが、両者には明確な違いがあります。
ベンチュリーマスク | ネブライザー付き酸素吸入装置 | |
主な目的 | 酸素濃度のコントロール | 酸素濃度のコントロール+加湿 |
加湿機能 | なし | あり |
つまり、
「酸素濃度を管理しつつ、気道粘膜の保護も同時に行いたい場面」では、
ネブライザー付き酸素吸入装置が非常に有用な選択肢となります。
実際には、術後の抜管直後や、呼吸状態が一時的に不安定な患者さんに対して、
加湿酸素療法を併用することで、回復を促す一助となることがあります。
このように、患者の呼吸状態やニーズに応じて、ネブライザー付き酸素吸入装置は重要な役割を果たしています。
【まとめ】
- ネブライザー付き酸素吸入装置は、酸素濃度の管理と加湿機能を兼ね備えた装置です。
- ベンチュリー効果を応用し、酸素と室内気を適切に混合しながら、ミスト化されたガスを供給します。
- 特に、呼吸粘膜の保護が求められる場面(術後、抜管直後など)で、重要な役割を果たします。
次回の記事(ネブライザー付き酸素吸入装置後半)では、
この装置を使用する際に注意すべきポイントや、酸素濃度設定について詳しく解説していきます。
参考文献
- 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会 酸素療法マニュアル作成委員会,日本呼吸器学会 肺生理専門委員会編:酸素療法の実際.酸素療法マニュアル,メディカルレビュー社,東京,2017,
- スキルアップセミナー 酸素療法の基礎からハイフローまで, 野口裕幸, 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌, 32(2024)3号p.288-292
関連記事
1)酸素療法とは
2)従来の酸素療法デバイス;COTとは
3)低流量システム
4)高流量システム
5)ベンチュリーマスク
6)ネブライザー付き酸素吸入装置(後半)