【はじめに】
高流量システムとは、患者の自発呼吸による吸気流量を上回る総流量(口元の流量)を、機器側から安定して供給する酸素療法を指します。
このシステムを用いることで、患者の呼吸パターンにかかわらず、設定した酸素濃度(FIO₂)を一定に保ったガスを送り続けることができます。
高流量システムの代表例
なぜ高流量システムが必要性なのか
通常、患者は自発呼吸によって一定量の吸気流量(およそ30〜40L/分)を確保しています。
しかし、酸素療法において機器からの供給流量が不足すると、周囲の室内気を一緒に吸い込むため、設定した酸素濃度よりも低い酸素を吸うことになってしまいます。
高流量システムでは、患者の最大吸気流量を上回る十分なガス流量を供給することで、
室内気の混入を防ぎ、設定通りの酸素濃度を確実に提供することが可能になります。
総流量のイメージ
患者の自発呼吸で生じる吸気流量よりも高い総流量が送られるとき、決められた酸素濃度のガスを送ることができます。
高流量システムでは、酸素と空気をミックスして、患者の吸気流量を常に上回るガスを供給します。
たとえば、
- 設定酸素濃度 40%
- 酸素流量 15L/分
の場合、総流量はおよそ62L/分のガスが口元に供給され、患者の最大吸気流量を上回るガスを供給することになります。
このように、患者の呼吸努力を上回るガス量を供給することで、一定の酸素濃度を安全に保つことができます。
まとめ
高流量システムは、
- 患者の吸気流量を上回るガスを安定供給できる
- 設定した酸素濃度を正確に維持できる
という大きなメリットを持つ酸素療法です。
次章では、この高流量システムを支える機器のひとつ、【ベンチュリーマスク】について詳しく解説していきます。
🧩総流量の計算方法が気になる方へ
酸素流量とマスク(口元)から流出される酸素/空気混合ガスの総流量は、次の図から簡単に求めることができます。
使い方 Air とO2 の比率を求める
air ; 100 – FIO2
O2; FIO2 – 21
air : O2 = (100 – FIO2) : (FIO2 – 21)
比率を求め設定酸素流量がわかれば総流量が求まる

例;FIO2 40%、酸素流量 15L/分の時の総流量はいくらか?
air ; 100 – 40 = 60
O2 ; 40 – 21 = 19
air : O2 = 60 : 19 ≒ 3 : 1
air : O2 = 3 : 1 = air : 15 = 45 : 15
総流量 60 L/分

例;FIO2 60%、酸素流量 10L/分の時の総流量はいくらか?
air ; 100 – 60 = 40
O2 ; 60 – 21 = 39
air : O2 = 40 : 39 ≒ 1 : 1
air : O2 = 1 : 1 = air : 10 = 10 : 10
総流量 20 L/分

参考文献
1)日本呼吸ケア・リハビリテーション学会 酸素療法マニュアル作成委員会,日本呼吸器学会 肺生理専門委員会編:酸素療法の実際.酸素療法マニュアル,メディカルレビュー社,東京,2017,
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