― Part 1:装着の手順と注意点 ―
🩺 使用開始までの流れ(臨床での実際の手順)
① 患者への説明と同意の取得
- 高流量酸素療法の目的と方法を簡潔に説明
- 装着前に不安や疑問を解消し、協力を得ることが重要
② 適切なポジショニング
ポジション | |
ファウラー位(30〜45°) | 呼吸補助筋が使いやすく、換気効率が良い基本姿勢 |
セミファウラー位(15〜30°) | 患者の苦痛や体位制限に応じて選択 |
仰臥位は避ける | 分泌物貯留や換気不全のリスクあり |
③ 機器の準備
- 電源ON、加温開始(加温に5〜10分かかることに注意)
- 回路・チャンバー・水系統の確認(リーク、水位、結露など)
④ 鼻カニューレのサイズ選定と装着
ポイント | |
サイズ選定 | 鼻腔の50〜70%を覆うサイズを選ぶ |
装着方法 | 両鼻孔に無理なく挿入 → バンドで頭部に固定(耳にかけない)→ チューブの引っ張りを防ぐ |
皮膚トラブル予防 | 鼻翼・鼻孔の発赤やびらんに注意。必要に応じて保護材を使用し、定期的にスキンチェックを行う。装着テンションも過剰にならないよう調整。 |

⑤ ハイフローセラピーの初期設定
① 急性低酸素性呼吸不全(acute hypoxemic respiratory failure ; AHRF)
推奨設定 | 補足 | |
流量 | 40〜60 L/min(できれば50 L/min以上) | 呼吸仕事量の軽減・PEEP効果の確保を目的とするため、高流量が必要 |
FIO₂ | 0.5〜1.0 (SpO₂目標:≧92〜94%) | 高めに開始して、酸素化を確保しながら段階的に調整 |
温度 | 34〜37℃ | 37℃が標準。快適性とのバランスで微調整可 |
② 抜管後(予防的使用)
推奨設定 | 補足 | |
流量 | 30〜50 L/min(40 L/min前後が目安) | 残存する呼吸筋疲労や咳嗽力低下を補助。徐々に減量していくことも |
FIO₂ | 0.3〜0.5 (SpO₂目標:≧92%) | 過剰酸素にならないよう注意しながら開始 |
温度 | 34〜37℃ | 呼吸状態と快適性に応じて調整可 |
③ 慢性期(在宅や緩和ケア、COPDなど)
推奨設定 | 補足 | |
流量 | 20〜40 L/min(低めで十分なことも) | 呼吸困難感の軽減が目的。夜間のみ使用などもありうる |
FIO₂ | 患者ごとに個別 (例:0.3〜0.4) | CO₂ナルコーシスのリスクがある場合は低酸素に配慮して使用 |
温度 | 31〜37℃ | 高温を不快に感じる患者も多く、調整が必要 |
🔍 補足:設定の調整ポイント
- SpO₂・呼吸数・労作時呼吸困難・表情などを観察しながら数分〜数十分で評価
- 急性期では流量より先に FIO₂の調整が基本
- 高齢者や慢性呼吸不全では「温度」「鼻腔刺激」への反応も見逃さないように!
⑥ 装着後の初期観察
- カニューレからしっかり流れているか確認
- 苦しさ・冷たさ・違和感の訴えがないか評価
- 初期トラブル(リーク、閉塞、音など)の早期発見に努める
⑦まとめ
ハイフローセラピーを安全かつ効果的に始めるには、準備から装着までの一連の流れがとても重要です。患者への丁寧な説明に始まり、呼吸がしやすい姿勢の確保、加温加湿や回路の準備、そしてカニューレの適切な装着――どれか一つが欠けても、患者の快適性や治療効果に影響を及ぼします。特に専用カニューレの装着では、鼻翼や鼻孔周囲の皮膚トラブルを防ぐために、サイズの選定やバンドの固定に細やかな配慮が求められます。
初期設定は患者の状態や目的によって変わりますが、装着後すぐの観察が次の一手を決める鍵になります。トラブルを未然に防ぐ“準備力”と、装着直後の“観察力”が、HFNC導入の成否を分けると言っても過言ではありません。
「次回は、HFNC装着後にどこを見て、どう判断するか――“モニタリングの基本”を解説します!」
関連記事