第6回:ハイフローセラピー|実際の使用方法とモニタリング

― Part 1:装着の手順と注意点 ―


🩺 使用開始までの流れ(臨床での実際の手順)

① 患者への説明と同意の取得

  • 高流量酸素療法の目的と方法を簡潔に説明
  • 装着前に不安や疑問を解消し、協力を得ることが重要

② 適切なポジショニング

ポジション
ファウラー位(30〜45°)呼吸補助筋が使いやすく、換気効率が良い基本姿勢
セミファウラー位(15〜30°)患者の苦痛や体位制限に応じて選択
仰臥位は避ける分泌物貯留や換気不全のリスクあり

③ 機器の準備

  • 電源ON、加温開始(加温に5〜10分かかることに注意)
  • 回路・チャンバー・水系統の確認(リーク、水位、結露など)

④ 鼻カニューレのサイズ選定と装着

ポイント
サイズ選定鼻腔の50〜70%を覆うサイズを選ぶ
装着方法両鼻孔に無理なく挿入 → バンドで頭部に固定(耳にかけない)→ チューブの引っ張りを防ぐ
皮膚トラブル予防鼻翼・鼻孔の発赤やびらんに注意。必要に応じて保護材を使用し、定期的にスキンチェックを行う。装着テンションも過剰にならないよう調整。

ハイフローセラピーの初期設定

① 急性低酸素性呼吸不全(acute hypoxemic respiratory failure ; AHRF

推奨設定補足
流量40〜60 L/min(できれば50 L/min以上)呼吸仕事量の軽減・PEEP効果の確保を目的とするため、高流量が必要
FIO₂0.5〜1.0
(SpO₂目標:≧92〜94%)
高めに開始して、酸素化を確保しながら段階的に調整
温度34〜37℃37℃が標準。快適性とのバランスで微調整可

② 抜管後(予防的使用)

推奨設定補足
流量30〜50 L/min(40 L/min前後が目安)残存する呼吸筋疲労や咳嗽力低下を補助。徐々に減量していくことも
FIO₂0.3〜0.5
(SpO₂目標:≧92%)
過剰酸素にならないよう注意しながら開始
温度34〜37℃呼吸状態と快適性に応じて調整可

③ 慢性期(在宅や緩和ケア、COPDなど)

推奨設定補足
流量20〜40 L/min(低めで十分なことも)呼吸困難感の軽減が目的。夜間のみ使用などもありうる
FIO₂患者ごとに個別
(例:0.3〜0.4)
CO₂ナルコーシスのリスクがある場合は低酸素に配慮して使用
温度31〜37℃高温を不快に感じる患者も多く、調整が必要

🔍 補足:設定の調整ポイント

  • SpO₂・呼吸数・労作時呼吸困難・表情などを観察しながら数分〜数十分で評価
  • 急性期では流量より先に FIO₂の調整が基本
  • 高齢者や慢性呼吸不全では「温度」「鼻腔刺激」への反応も見逃さないように!

⑥ 装着後の初期観察

  • カニューレからしっかり流れているか確認
  • 苦しさ・冷たさ・違和感の訴えがないか評価
  • 初期トラブル(リーク、閉塞、音など)の早期発見に努める

⑦まとめ

ハイフローセラピーを安全かつ効果的に始めるには、準備から装着までの一連の流れがとても重要です。患者への丁寧な説明に始まり、呼吸がしやすい姿勢の確保、加温加湿や回路の準備、そしてカニューレの適切な装着――どれか一つが欠けても、患者の快適性や治療効果に影響を及ぼします。特に専用カニューレの装着では、鼻翼や鼻孔周囲の皮膚トラブルを防ぐために、サイズの選定やバンドの固定に細やかな配慮が求められます。

初期設定は患者の状態や目的によって変わりますが、装着後すぐの観察が次の一手を決める鍵になります。トラブルを未然に防ぐ“準備力”と、装着直後の“観察力”が、HFNC導入の成否を分けると言っても過言ではありません。

「次回は、HFNC装着後にどこを見て、どう判断するか――“モニタリングの基本”を解説します!」

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