動画ファイルを見てほしい
これはかなり進行した肺気腫であり、健常肺野がとてつもなく少なくなっている。こんな症例の場合は肺胞破壊と肺毛細管の破壊が進み、右室の後負荷が高くなっている。言い方を変えれば常に右室不全と隣り合わせであるのだ。もちろん健常肺野が少ないということは肺血流の限界点も低く、酸素供給量は低くなっている。(左室の前負荷が減少しているのだ)
酸素供給量についてはヘモグロビンと心拍出量に比例することは今さら説明することではないけれど(PaO2は肺での酸素化の指標にすぎない)、こんな症例の場合には過剰な輸液は御法度であることはわかりきったこと。しかしながらヘモグロビンを増やさないことには全身への酸素供給量が消費に追いつかなくなる。私は医師ではないので治療に関しては口出できないけれど、こういう症例では輸血を施すだけで驚くほど呼吸が落ち着き、全身状態も改善したケースをいくつも見てきた。 いつだったか、どこかで見かけた「HBが7g/dl以上は輸血に対して・・・」 すべてをひっくるめた指針のような書き方をしていたけれど、どうなのだろうかね?
さて動画CT内でややたらとブラの周りが白く囲まれている状態であることがわかると思うが、これは肺胞構造構築破壊後の組織融合がさらに長い間続いて周辺が基質化している状態であり、sの周辺は硬くなっている。
咳嗽反射の気道内圧は一般的に100~150cmH2O位になり、その圧で気腫性膿疱が破壊され、長い期間を経て集合してブラになっていく。そのため基質化されたブラはちょっとやそっとの圧では破れない。そんな状態になっている肺気腫ではブラに吸気ガスが逃げ、死腔になっているため吸気ガスのガス交換立は低くなる。それ故、代償的に吸入酸素量を増やすために大きな呼吸運動を行うようになる。だから慢性呼吸不全患者のレントゲン写真を見ると残気量が増えるために滴状心(涙滴心、TearDrop heart)になっていることが多い。さらに樽状胸にもなりやすく、呼吸運動の関係から肺尖部や肺底部はブラの好発部位となっていることが多い。
基質化したブラが多く観察されている際の人工呼吸で重要なことで、背系一般に言われている事柄で、いつ首をかしげる事柄がある。それは
「ブラがあるから圧をかけるな」
とよく耳にする。それって本当か? 気道内圧は低ければ低いほど良いが、単独でも合併症でも呼吸不全を起こすまで悪化している巨大ブラを有している肺気腫に気道内圧を施さなかったら、健常肺はどうやってガス交換のための吸気ガスを取り込むのだ? 自発呼吸下と陽圧換気下ではあたりまえだが肺患胸は大きく異なり、一概に圧を・・・・とはいえなくなる。その点を指示する偉い人たちはわかっているのだろうか、いつも義門に思っていた。
(書き込みに疲れたので 次に続けます)
CT画像を見てほしい。この程度の肺気腫であれば呼吸不全の主訴で病院にかかることは滅多にない。何か別の疾病で来院され、検査のために CT撮影を行ったら肺気腫が見つかるのが定番なパターンだ。写真の主も脳血管障害だった。呼吸器はしっかりとリクルートを行い、さらにPmci.iのPEEP設定を施したおかげでpH=7.33、PaO2=590(FiO2=1.0)、PaCO2=45で、おもいっきりノーマルな値。グラフィックもRM他、整えたおかげで・・・・といいたいことだが、いつものように呼気時にchest compressionを施すと、EtCO2波形のise upを認めた。chest compressionを行わないpassiveな呼気波形の第Ⅲ相は完全なPlateau。それだけを見ればCOPDの疑いは持たないのが普通だね。
添付図の絵を見てもらいたい。中心小葉性肺気腫の時期は、弾性を失い始めた肺胞が破壊と融合を繰り返すが、ガス交換の場もある程度存在している。しかし弾性率が減少しているために、PEEPレベルの気道(肺)内圧では膨らみこそすれど、伸び縮みの幅は少なく、PEEPレベルでは膨らんだまま縮まない、それ故肺胞内で拡散したCO2は(換気の期待)外に出てこない状態となってしまう。肺胞周辺はシャンと様な血ガス環境になっている。しかし脳胞自体は紙風船のように多くの換気ガス抱え込んでいるため、呼気ガスの二酸化炭素は希釈され、本来の呼気ガス二酸化炭素濃度より低くなるのだ。
私は人工呼吸導入時に疾患背景や合併症が不明でも、目の前のケースがその状態にあるか否かを確かめるために、必ずchest compresionを施して確をしてきた。
ここでPEEPを低くすればブラも伸展して二酸化炭素の拡散に貢献すると思われがちだが、しっかりと肺胞を開いておかなければ健常肺野でのガス交換は少なくなり血ガスの悪化をまねく。悪化は陽圧換気を長引かせることになる。しかしただそれだえではなく、もっともっと大きな問題が発生する。
それは無気肺が存在することで肺障害を起こしやすくなるだけでなく、多臓器不全の原因となるBIO TRUMAの発生であり、全身管理上大きな7問題となってくる。
さらに無気肺はHPVCを発生さえ肺血流の低下を招く。肺血流の低下は左室の前負荷を減少させ心拍出量の低下を招く。それは全身への酸素供給量の低下となる。心拍出量の低下は恒常性の維持に・・・・・・と様々な問題の発生につながっていくのである。
肺の管理は全身管理の要といってよいと私は思う。それ故にサッサと肺環境を整えて人工呼吸から離脱させるのが重要だと考えてきた。
肺気腫の管理の内容から少し外れてしまったが、次はしっかりと重症の際の管理経験等を話していこうと思う。
私が伝えるの際の実例では、症例の転機は残念ながら・・・・というのはないから安心してチョね。 ダメだったときの情報は以前から出したことはないよ。
様々な経験を踏まえみなさんにお伝えしていく ぞい
もおたろう
後日、下記の内容の画像をアップする予定なので、今回は文章だけで「ムフフ」と想像しながら読んでください。
重症化して呼吸不全に陥ったCOPD、特に肺気腫では、コケる前までは残存する健常肺野で何とか生命維持ができていたはず。それが何らかの原因でガス交換に支障が生じて入院、加療となるのだから、入院以前の肺環境に戻せれば先行きの見通しができてくる。そのためにしなければ行けないことは、当たり前だが健常肺野を元通りにしてあげる必要がある。
陽圧換気ナンザ良いことはしていないけれど、そんな時は必要不可欠になる。
ブラは低い圧で膨らむが弾性に乏しいので、換気時の残気量こそ大きくても伸展率は低い。低い圧で換気を行うと、ブラは伸展してもゴム風船特性の健常肺野は膨らまない。そうなると当然酸素化も悪い。PEEPを中途半端に施すと、ブラばかり膨らんで健常肺野への換気ガスの出入りが少なくなる。
ブラが膨らみきった状態でPEEPを施すと、それ以降の吸気圧は健常肺野へと移行する。これが過去、肺気腫の陽圧換気のミソになってきた。
そのPEEP値をどのように把握するかは今後の書き込みで行って行く予定だが、これによって多くの(激症型?)肺気腫急性増悪患者のケツを蹴り上げてきた。 ただしこれは呼吸不全を起こすような重症な肺気腫で通じる事柄で、二次的に発見されたような初期段階の肺気腫では通用しない。その理由はブラは成長段階で基質化がなされていないため、とても膨らみやすい性質になっている。見かけ上のコンプライアンスが異常に大きな値であることもたたある。そんな状況の肺に大きな圧をかければ、そりゃぁ破綻(破けて)してあたりまえだ。 そこのところ気を付けて接してほしい。
そして改善後の人工呼吸離脱だが、臨床時代の私の環境下では最大でPEEP=12cmH2Oの状態で気管チューブ抜去となった症例が何度もあった。
抜管は客観的な離脱評価ツール(SmartCare)を使用したのは良いが、実際にはその後の自発呼吸サポートでいつも四苦八苦してきた。多くはNPPVを使用していたが、Returnするケースも少なくなかった。
NPPVつうのは換気補助であって肺胞伸展補助なんだよね。だから圧をかけてもブラへ逃げるケースがあることを想像するに難しくなく、高い圧をかけると離脱するのがいつになるかわからない。圧の増減イタチごっこに多かった。
その後出てきたNFHC。コイツは肺胞伸展補助ではなく、気道抵抗低減ディバイスであったことを、使用し始めて悟ったといきは重症な肺気腫の人工呼吸離脱後に明るい未来が訪れることを予感した。
MHFCはPEEP葉効果だとか二酸化炭素washoutだとか、当初いろいろと色づけられていたけれど、私ははじめの頃からFlow Supportだと胃っていた。バケツの水をストローで吸い上げる場合と、水道の蛇口下で流れる水を浮け止めるのでは飲水するときの労力が違う。もちろん後者のほうが楽に飲める。 気管や細気管枝によって出来上がる吸気時の気道抵抗は健常肺野ゴム風船を膨らみにくくする。肺気腫の気腫性嚢胞ブラは小さな吸引力で初期段階は膨らむ。気道遅効が災いして健常肺野は膨らみにくくなってしまう。
ここで気管気管支に常に気体が正方向へ流れる環境をスタンバイしておけば、ゴム風船は大きな吸引力を要せずとも伸展が可能となる。もちろんブラも伸展をするが、キャパシティーは断然正常肺胞のほうが大きい。
NHFCのおかげで陽圧換気離脱後の患者環境は大きく変わって、より良い方向へ変化した。
現在ではCOPD患者の在宅でのNHFCの保険点数も確保されている。以前は酸素ボンベか液体酸素でしか在宅時の酸素追加供給は不可能だったが、現在は酸素濃縮機構を有し、在宅でも使用可能な呼吸器も販売されている。
時代は進化しているのだね。
順序は逆になってしまったが、次回から重症な肺気腫で、どのようにRecruitment maneverを施して健常肺野を獲得してきたかを記していこうと思う。
添付画像一番左、これはかなり深刻な呼吸不全を患った肺気腫で、見やすくするため、部分的にコントラストを変えておいたが、左右前胸側と左背側に黒く抜けた大きな穴が見えると思う。これが気腫性脳胞(ブラ)で( ↑ 上スレ 赤く塗れってか)その周りにさらに白く見やすくしておいた線が見えると思うが、ここは基質化して堅くなった壁に変化した部分。コイツがくせ者で、ベロベロの紙風船のクセして大きな容量を持っている。
中途半端なPEEP設定の様圧換気を施すと、吸気ガスが取られて呼吸不全はさらに悪化する。その際、VCVなんぞで換気したら最悪な状況になることは、賢明な読者のみなさんならすぐにわかるよね。
基質化した壁は堅くなっているからそう簡単に破綻しない(100~150cmH2Oにもなる咳嗽反射の繰り返しで、肺胞が破綻、融合しきたのだから)。だからこそ様圧換気を行う際には、このブラが機能的残気量で満たされ、伸展をしなくなる圧域まで引っ張り上げなければ、ゴム風船状態の健常肺胞は陽圧での伸展ができないのだよ。
呼吸不全になってしまった状態の健常肺野の伸展を回復させてあげれば、こんな肺気腫で立ち上げることだできるようになるっちゃね。
真ん中の画像も結構な重症度だけれど、左端のような大きなブラはできていない。しかし基質化している状態のブラは広範囲に存在している。さらに左端では存在が確認された健常肺野が真ん中のCT画像患者ではかなり少なくなっている。こうなった状態はかなり厄介で、実際、CTを見て頭を抱えるケースであった。立場上口には出せないが(実際は・・・)、輸血でヘモグロビンをしっかり増やしてもらわなければ、ただでさえはい毛細管が少なくなっていて、右室高負荷増加、左室前負荷減少、心拍出量低下による酸素供給量低下は目に見えている。
そして健常肺野をこじ開けて維持する呼吸管理設定を施さなければいけないのだよね。そのために必要なことは、3breath stepwise RMとLow Flow PV loopの活用になってくる。そして適正に健常肺野が獲得できれば絶対にP/Fは恒常性維持値を得ることができる(ただし PaCO2は別、Henderson-Hasselbalch equationは大前提になってくる)
健常肺野をしっかり開けなければPEEPの設定、効果は不完全になっていまう。
ここでネックになってくるのが教科書的な事柄と、臨床の実際の違いで、高い気道内圧をかけるとブラが破綻するという内容。
確かにブラは高い圧を施すと破綻しやすいことは正しいけれど、それは一番右端の状態の肺気腫等の際には注意を払わなければいけない。このケースは基質化していない比較的軽少な8?)肺気腫で、呼吸不全を主訴とする状態で人工呼吸を施すことはまず7ありえない。別な疾患で全身検査を施したらそんな状態の肺気腫合併が露見したというのがほとんどだ。
例えばこんな状態を知らずに高い気道内圧や、中途半端なVCVを施したら、ブラの破綻を誘発することも十分あり得る。
何にしても人工呼吸の陽圧は低ければ低いほどよいけれど、何をしたら低くすることができるかを知っておかなければいないのだよ。
とある人物がAPRVの勉強会で
「肺気腫でブラがあったら、そんなに高い気道内圧をかけたら破ける危険性があるじゃないか」
といって怒っていたことがあった。その時の私は聴講者で講師側ではない。
いくら勉強好きで頭が良くて立場も〇〇でも・・・・参加していた他の皆さんはドン引きだったのを覚えている。
安全を獲得できないなら中途半端なことは止めておいた方が言い。 現場で行き詰まって意見を聞かれたら、こんなこともあるから、で話しても良い。この後いろいろなケースを紹介しようと思うが、先に記しておく、紹介しているケースの転帰は、みな良かったけーすだからね。
それとこの後のスレに胸部レントゲンで確認もできるブラが写っている写真を載せておくよ。