オペレーション3;「ブドウ畑」でのガス交換ミッションの実態;肺胞とガス交換

肺は、肺胞というたくさんのブドウのような房が集まった塊みたいなものです。その面積を広げると、なんと小学校の教室一面分(およそ70m2にもなる広大なエリア!あなたの胸の中に、こんなに広い「巨大な受け渡し集配所」が収納されているのです。
極薄の壁でできたブドウの実ひとつひとつの周りには、細い血管(毛細血管)が絡みついています。そこで繰り広げられるのが、空気(酸素)と血液中の赤血球一瞬のハイタッチです。

【交換のルール:薄い肺胞の膜(肺胞壁)を越える濃度の密約】

このハイタッチの原動力は、「濃度(ガス分圧といいます)の差」。新鮮な空気のブドウ房(肺胞)には酸素が満タン!。一方、全身を巡ってきたトラック(血液)には二酸化炭素(排気ガス)をたくさん積んでいます。

薄い肺胞の膜(肺胞壁)を隔てて、酸素(燃料)は血液中の赤血球(特急配送員)に、「濃い方から薄い方へ」という自然界のルール(拡散)に従い、極短時間で酸素(燃料)を積み込み、不要になったガス(二酸化炭素)をブドウの房の中に移します。これがガス交換です。

【排出ガスの秘密: CO2の賢い二刀流とスピード】

不要になった二酸化炭素(排気ガス)は、実は酸素(燃料)とは違い、液体に溶けやすいという特性を持っています。

炭酸飲料のように、CO2血液の液体成分(血漿:けっしょう)という「大型トラック」にも溶け込んで運ばれ、赤血球(特急配送員)との「二刀流」で肺に到着します。

さらに、CO2はこの広大な肺胞のブドウ房の中に移動するスピードも、酸素に比べて約20倍も速い「拡散のプロ」なのです。

この「液体に溶けやすい」性質と「約20倍の拡散スピードのおかげで、赤血球は肺胞でのわずかな時間(約0.7秒)(毛細血管内の滞在時間は安静時でおよそ0.75秒とされています)でCO2をほぼ肺胞へ受け渡しを完了し、同時に酸素を積み込むことができます。
私たちの身体は、排気ガスを最優先で素早く処理するという、非常に賢いシステムを持っているのです。

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呼吸の仕組みに潜入(目次)

オペレーション2:「巨大オペレーター「横隔膜」と「肋間筋」(吸気=陰圧の正体)」

次はオペレーション4「潜入レポート続報;浅い呼吸が招く現場のブラック労働」

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