第3章-1:呼吸不全とは?〜分類と病態をやさしく解説〜

呼吸不全とは、「どんな原因であっても、動脈血の酸素や二酸化炭素の値が異常になり、それによって身体が正常な機能を維持できなくなった状態」と定義されています1)

かみ砕いて言えば、「体の中でガス交換がうまくいかず、酸素が足りない、あるいは二酸化炭素が溜まってしまっている状態」です。

医学的な診断基準では?

厚生省の特定疾患「呼吸不全」調査研究班の診断基準2)では、以下のように定義されています:

Ⅰ. 室内気吸入時(酸素を吸っていない状態)に、PaO₂が60 Torr以下 → 呼吸不全と診断
Ⅱ. PaCO₂が45 Torrを超える → Ⅱ型呼吸不全、それ以下 → Ⅰ型呼吸不全
Ⅲ. 少なくとも1ヶ月以上この状態が続くと「慢性呼吸不全」。PaO₂が60~70 Torrのボーダーラインにある場合は「準呼吸不全」として注意が必要

Ⅰ型とⅡ型の違いとは?

Ⅰ型呼吸不全(酸素不足タイプ): PaO₂が60 Torr以下で、PaCO₂は正常または低値(≦45 Torr)

Ⅱ型呼吸不全(二酸化炭素が溜まるタイプ): PaO₂が低く、PaCO₂が45 Torrを超える

おわりに

呼吸不全は、人工呼吸を検討する上での大切な入口です。
このあとの章では、「酸素投与しても改善しない」ような 酸素化障害 について、より詳しく解説していきます。

引用文献

1)笹本 浩,横山哲朗:肺不全と呼吸不全. 呼吸と循環 17: 4,1969.
2)横山哲朗:厚生省特定疾患「呼吸不全」調査研究班. 昭和56年度研究業績,p1、1982.


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