〜吸って吐くだけじゃない、酸素の旅に出よう〜
【はじめに】
呼吸をさぼったこと、ありますか?
私たちは普段、何気なく呼吸をしています。意識せずに吸って、吐く──それを一日に2万回以上も繰り返しているのです。
鼻や口から空気を吸い込むと、気道を通って肺に到達し、やがて肺胞で血液と出会います。そこで酸素が取り込まれ、二酸化炭素が排出されます。
では、この二酸化炭素は体のどこからやってくるのでしょうか?酸素はどうやって全身に届けられ、どのように使われているのでしょうか?
この章では、「呼吸」という営みの全体像について、あらためて見つめ直していきましょう。
1. 呼吸には2つの意味がある
呼吸という言葉は、日常的には「空気を吸って二酸化炭素を吐く」という動作を意味することが多いでしょう。しかし、医学の世界では、もう一つ意味があることをご存じでしょうか。
呼吸は、大きく分けて「外呼吸」と「内呼吸」の2つに分類されます。この節では、それぞれの違いについて整理していきます。
1-1. 外呼吸
外呼吸とは、肺で行われるガス交換のことです。
私たちが吸い込んだ空気は、気道を通って肺に届き、肺胞という場所にたどり着きます。肺胞では、空気中の酸素が毛細血管を通じて血液に取り込まれ、代わりに血液中の二酸化炭素が肺胞へと放出されて、呼気として体外に排出されます。
つまり外呼吸は、「肺と血液の間で酸素と二酸化炭素を交換するはたらき」です。
1-2. 内呼吸
内呼吸とは、全身の細胞が血液から酸素を受け取り、代謝に利用する過程を指します。
細胞は、酸素を使ってエネルギー(ATP)を生み出します。その過程で不要になった二酸化炭素が発生し、これが血液に取り込まれて、肺へと運ばれていきます。
つまり内呼吸は、「細胞が酸素を使ってエネルギーを作り、二酸化炭素を排出する生理的プロセス」です。
2. 呼吸の目的:酸素の取り込みと二酸化炭素の排出
呼吸とは何のためにあるのでしょうか?この問いの答えはとてもシンプルです。
「体に酸素を取り入れ、不要な二酸化炭素を排出するため」──それが呼吸の役割です。
● 酸素の役割
体の細胞は、生命活動を維持するために常にエネルギーを必要としています。そのエネルギーの多くは、酸素を使った代謝によってつくられます。
この代謝の過程では、糖や脂肪といった栄養素が酸素と反応してATP(アデノシン三リン酸)というエネルギー分子が産生されます。ATPは、細胞のあらゆる活動(筋肉の収縮、脳の働き、ホルモンの分泌など)を支える燃料のような存在です。
● 二酸化炭素の処理
このエネルギー産生の副産物として、二酸化炭素(CO₂)が発生します。二酸化炭素は体にとって不要なものなので、速やかに血液に乗せて肺へと送り返し、呼気として体外に排出する必要があります。
この二酸化炭素の蓄積が進むと、血液の酸性度が上がってしまい、体内環境が大きく乱れる原因になります。
【まとめ】
呼吸の目的は、
「酸素を取り入れて、細胞に届け、使わせる」ことと、
「その結果として生じた二酸化炭素を、体の外へ出す」ことです。
このふたつがバランスよく保たれていることが、「うまく呼吸できている」ということなのです。
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