【はじめに】
ネブライザー付き酸素吸入装置は、術後の患者に対する抜管後の酸素投与や、軽度呼吸不全に対する酸素投与など、多くの場面で使用されています。
しかし、誤った使い方も見られがちな装置でもあります。
この記事では、基本的な使用方法と使用時に注意すべきポイントについて、わかりやすく解説します。
基本的な使い方について
ネブライザー付き酸素吸入装置は、酸素流量計、ネブライザー本体、回路(ホース)で構成され、酸素流量と酸素濃度(FiO₂)を設定して、患者に加湿された酸素ガスを供給します。
酸素流量は、最低でも5L/分以上が必要で、通常は10〜15L/分で設定します。
酸素濃度は、70〜80%まで設定できるものもありますが、35〜40%が一般的に安定して使用される範囲です。
使用にあたっては、酸素マスク、トラキオマスク、挿管チューブ、気管切開チューブなど、患者の状態に応じた接続方法を選択します。
使用上の注意点① — 総流量について
ネブライザー付き酸素吸入装置で患者さんに供給される総流量は、
設定した酸素濃度と酸素流量によって異なります(詳しくは高流量システムを参照)。
表1に、設定酸素流量、酸素濃度と総流量の関係を示します。
患者さんの安静時の最大吸気流量は30〜40L/分程度とされています。
そのため、表中で示した緑色の範囲に該当する組み合わせであれば、
吸気流量を十分に上回り、安定した酸素濃度を供給することが可能になります。

表1 設定酸素流量、酸素濃度と総流量の関係
使用上の注意点② — 供給ガスの温度について
ネブライザー付き酸素吸入装置では、
酸素は壁の配管から供給され、空気は室内気を取り込んで、
ボトル内の水をミスト化して患者に送ります。
そのため、患者に供給されるガスは、
室内気と同程度、あるいはそれ以下の温度になります。
冷たいミストは気道を刺激しやすく、
場合によっては気管攣縮(気道の強い収縮)を引き起こすリスクがあります。
このリスクを回避するため、
ネブライザー使用時にはヒーターを併用し、供給ガスを適切な温度に温めることが推奨されます。
使用上の注意点③ — 観察のポイント
酸素流量と酸素濃度を設定してガス供給を開始したら、
患者さんに対して安定した供給ができているかを確認することが重要です。
チェックすべきポイントは、
呼気時だけでなく吸気時にも、患者投与デバイスの周囲からミストが出ているかどうかです。
(マスク、気管切開チューブなど、使用するデバイスによって若干異なります。)
吸気時にもミストが出ている場合、
患者が周囲の空気を大きく引き込まず、
安定した酸素濃度が維持されていることを意味します。
逆に、吸気時にミストが大量に引き込まれるようであれば、
総流量が不足しているサインです。
この場合は、設定している酸素流量を増やして対応します。
【コラム】デバイスに応じた準備
ネブライザー付き酸素吸入装置は、使用するデバイスによって接続方法が少し異なります。
適切なデバイスを選び、正しく準備することで、より安定した酸素療法が実現できます。
● 酸素マスクを使用する場合
ホース接続が可能な、ネブライザーマスクを準備します。
通常の酸素マスクでは接続が難しいため、専用マスクを選択しましょう。
● トラキオマスクを使用する場合
ホース接続が可能な、トラキオマスク(トラキマスク製品)を準備します。
気管切開後の患者さんに適した設計になっています。

● 挿管チューブ・気管切開チューブを使用する場合
Tコネクターを使用して装置側のホースと接続します。
さらに、Tコネクターのもう一方には15cm程度の延長ホースを取り付けましょう。
延長ホースは、リザーバーの役割を果たし、吸入酸素濃度(FiO₂)の安定化に寄与します。
トラブルシューティング
1. ボトル内の水位低下
ボトル内の水位が低下すると、ネブライザー効果が得られなくなります。
さらに、水が完全になくなると、空焚きによる事故リスクが生じるため、注意が必要です。
定期的に水位を確認し、必要に応じて補充しましょう。
2. 水位低下の要因
水位の低下は、総流量および加温設定に依存します。
総流量が多いほど、また加温している場合ほど、蒸発による水位低下は早まります。
装置の設定条件を把握し、早めの水補充を心がけましょう。
3. 回路内の結露
回路(ホース)内に結露が発生し、それが滞留すると、
流路の抵抗となって設定流量が送れなくなる可能性があります。
結露は適宜排出し、回路内をクリアな状態に保つことが重要です。
【まとめ】
この記事では、ネブライザー付き酸素吸入装置の安全な使用方法と注意すべきポイントについて、現場目線でわかりやすく解説してきました。
正しく設定・管理することで、
患者さんにとっての酸素療法の効果をより高め、安全性も向上させることができます。
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