第5回(前編):ハイフローセラピーに必要な機器とその準備

第5回(前編):ハイフローセラピーに必要な機器とその準備

はじめに

ハイフローセラピー(HFT)は、患者さんの呼吸を助けるために使われる酸素療法の一つです。適切に使うためには、機器の構成と準備方法について理解しておくことが大切です。

どのような種類があるか、また、どのように使い分けているかを知っていることは、それらを使う人にとって重要な第一歩となります。

この【前編】では、HFTで使用するブレンダーや流量計、加温加湿器といった基本的な構成について解説します。


1. ブレンダー+流量計タイプ

HFTの基本構成のひとつが、「ブレンダー+流量計」の組み合わせです。これは、壁面に設置された高圧酸素や空気の配管からガスを引き込み、FIO2(吸入酸素濃度)を設定して、適切な流量(L/min)を供給する仕組みです。

ブレンダー+流量計

使用時の注意点

  • 配管接続ミス:酸素と空気の両配管が必要で、片方が外れると笛(アラーム)が鳴り、圧力低下により作動しなくなる場合があります。
  • 流量制限:流量計の種類により最大流量が異なります。通常、成人用では40〜60L/min、小児用では0〜30L/min程度のものを選びます。
  • 機器の準備:加温加湿器や専用の加温呼吸回路(ヒーター熱線入り呼吸回路)などを準備する必要があります。

2. ベンチュリータイプ(酸素のみ接続)

酸素配管や、酸素ボンベはあるが、空気配管のない環境で使いやすいのがベンチュリータイプです。酸素を高流量で供給しながら、周囲の空気を引き込んでFIO2を調整します。

ベンチュリータイプ

使用時の注意点(ベンチュリータイプ)

  • FIO2の設定範囲:構造上、32〜100%の酸素濃度設定が可能ですが、呼吸パターンにより実際の吸入濃度は変動します。
  • 騒音や吸気抵抗:空気取り込み音が大きくなるため、静音マフラーの装着や設置環境に配慮が必要です。
  • 流量と酸素濃度の調整:フローメーターで流量を、酸素濃度計でFIO2を確認しながら、それぞれ調整ノブで設定します。

ブレンダーの種類

タイプ特徴
酸素+空気 両方の配管を接続するタイプより正確なFIO2設定が可能。成人・小児問わず使用される。
酸素のみ接続し、空気を取り込むベンチュリータイプ空気配管が不要で設置が簡便。酸素濃度計の表示を見てFIO2を決定する。

3. 加温加湿器

HFTでは、高流量のガスを長時間吸入するため、ガスの温度と湿度を適切に管理することが重要です。乾燥したガスは、粘膜を傷つけたり、分泌物の粘稠化を引き起こし、かえって呼吸状態を悪化させることがあります。

推奨される加温加湿器

製品名製造元特徴
MR850Fisher & Paykel社チャンバー温度+口元温度の設定はは、自動制御とマニュアル制御(プリセット方式)がある。
VHB200Vincent Medical社制御はマニュアルコントロール。加温加湿器としての出力は高い。温度と相対湿度のモニターがある。

⚠️ VHB150(IMJ社)はHFTには不適です。加温加湿性能が不十分で、長時間使用においては注意が必要です。

F&P 社 MR850
IMJ社 VHB200

次回【後編】では、専用装置(AIRVO 2やInspiredフロー)について詳しく解説し、それぞれの機器の使い分けや注意点をまとめます。

この記事は、2025年3月時点でのものです。最新情報を入手次第アップデートいたします。

関連記事

  1. 酸素療法とは
  2. 第1回ハイフローセラピーの呼称・背景・普及の理由
  3. 第2回;従来の酸素療法との違い ― ハイフローセラピーの優位性とは?
  4. 第3回:ハイフローセラピーの生理学的効果
  5. 第4回:どんな患者に使える?
  6. 第5回(後編):HFT専用装置とタイプ別の使い分け

はじめに

ハイフローセラピー(HFT)は、患者さんの呼吸を助けるために使われる酸素療法の一つです。適切に使うためには、機器の構成と準備方法について理解しておくことが大切です。

どのような種類があるか、また、どのように使い分けているかを知っていることは、それらを使う人にとって重要な第一歩となります。

この【前編】では、HFTで使用するブレンダーや流量計、加温加湿器といった基本的な構成について解説します。


1. ブレンダー+流量計タイプ

HFTの基本構成のひとつが、「ブレンダー+流量計」の組み合わせです。これは、壁面に設置された高圧酸素や空気の配管からガスを引き込み、FIO2(吸入酸素濃度)を設定して、適切な流量(L/min)を供給する仕組みです。

ブレンダー+流量計

使用時の注意点

  • 配管接続ミス:酸素と空気の両配管が必要で、片方が外れると笛(アラーム)が鳴り、圧力低下により作動しなくなる場合があります。
  • 流量制限:流量計の種類により最大流量が異なります。通常、成人用では40〜60L/min、小児用では0〜30L/min程度のものを選びます。
  • 機器の準備:加温加湿器や専用の加温呼吸回路(ヒーター熱線入り呼吸回路)などを準備する必要があります。

2. ベンチュリータイプ(酸素のみ接続)

酸素配管や、酸素ボンベはあるが、空気配管のない環境で使いやすいのがベンチュリータイプです。酸素を高流量で供給しながら、周囲の空気を引き込んでFIO2を調整します。

ベンチュリータイプ

使用時の注意点(ベンチュリータイプ)

  • FIO2の設定範囲:構造上、32〜100%の酸素濃度設定が可能ですが、呼吸パターンにより実際の吸入濃度は変動します。
  • 騒音や吸気抵抗:空気取り込み音が大きくなるため、静音マフラーの装着や設置環境に配慮が必要です。
  • 流量と酸素濃度の調整:フローメーターで流量を、酸素濃度計でFIO2を確認しながら、それぞれ調整ノブで設定します。

ブレンダーの種類

タイプ特徴
酸素+空気 両方の配管を接続するタイプより正確なFIO2設定が可能。成人・小児問わず使用される。
酸素のみ接続し、空気を取り込むベンチュリータイプ空気配管が不要で設置が簡便。酸素濃度計の表示を見てFIO2を決定する。

3. 加温加湿器

HFTでは、高流量のガスを長時間吸入するため、ガスの温度と湿度を適切に管理することが重要です。乾燥したガスは、粘膜を傷つけたり、分泌物の粘稠化を引き起こし、かえって呼吸状態を悪化させることがあります。

推奨される加温加湿器

製品名製造元特徴
MR850Fisher & Paykel社チャンバー温度+口元温度の設定はは、自動制御とマニュアル制御(プリセット方式)がある。
VHB200Vincent Medical社制御はマニュアルコントロール。加温加湿器としての出力は高い。温度と相対湿度のモニターがある。

⚠️ VHB150(IMJ社)はHFTには不適です。加温加湿性能が不十分で、長時間使用においては注意が必要です。

F&P 社 MR850
IMJ社 VHB200

次回【後編】では、専用装置(AIRVO 2やInspiredフロー)について詳しく解説し、それぞれの機器の使い分けや注意点をまとめます。

この記事は、2025年3月時点でのものです。最新情報を入手次第アップデートいたします。

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