はじめに
ハイフローセラピー(HFT)は、患者さんの呼吸を助けるために使われる酸素療法の一つです。適切に使うためには、機器の構成と準備方法について理解しておくことが大切です。
どのような種類があるか、また、どのように使い分けているかを知っていることは、それらを使う人にとって重要な第一歩となります。
この【前編】では、HFTで使用するブレンダーや流量計、加温加湿器といった基本的な構成について解説します。
1. ブレンダー+流量計タイプ
HFTの基本構成のひとつが、「ブレンダー+流量計」の組み合わせです。これは、壁面に設置された高圧酸素や空気の配管からガスを引き込み、FIO2(吸入酸素濃度)を設定して、適切な流量(L/min)を供給する仕組みです。

使用時の注意点
- 配管接続ミス:酸素と空気の両配管が必要で、片方が外れると笛(アラーム)が鳴り、圧力低下により作動しなくなる場合があります。
- 流量制限:流量計の種類により最大流量が異なります。通常、成人用では40〜60L/min、小児用では0〜30L/min程度のものを選びます。
- 機器の準備:加温加湿器や専用の加温呼吸回路(ヒーター熱線入り呼吸回路)などを準備する必要があります。
2. ベンチュリータイプ(酸素のみ接続)
酸素配管や、酸素ボンベはあるが、空気配管のない環境で使いやすいのがベンチュリータイプです。酸素を高流量で供給しながら、周囲の空気を引き込んでFIO2を調整します。

使用時の注意点(ベンチュリータイプ)
- FIO2の設定範囲:構造上、32〜100%の酸素濃度設定が可能ですが、呼吸パターンにより実際の吸入濃度は変動します。
- 騒音や吸気抵抗:空気取り込み音が大きくなるため、静音マフラーの装着や設置環境に配慮が必要です。
- 流量と酸素濃度の調整:フローメーターで流量を、酸素濃度計でFIO2を確認しながら、それぞれ調整ノブで設定します。
ブレンダーの種類
タイプ | 特徴 |
酸素+空気 両方の配管を接続するタイプ | より正確なFIO2設定が可能。成人・小児問わず使用される。 |
酸素のみ接続し、空気を取り込むベンチュリータイプ | 空気配管が不要で設置が簡便。酸素濃度計の表示を見てFIO2を決定する。 |
3. 加温加湿器
HFTでは、高流量のガスを長時間吸入するため、ガスの温度と湿度を適切に管理することが重要です。乾燥したガスは、粘膜を傷つけたり、分泌物の粘稠化を引き起こし、かえって呼吸状態を悪化させることがあります。
推奨される加温加湿器
製品名 | 製造元 | 特徴 |
MR850 | Fisher & Paykel社 | チャンバー温度+口元温度の設定はは、自動制御とマニュアル制御(プリセット方式)がある。 |
VHB200 | Vincent Medical社 | 制御はマニュアルコントロール。加温加湿器としての出力は高い。温度と相対湿度のモニターがある。 |
⚠️ VHB150(IMJ社)はHFTには不適です。加温加湿性能が不十分で、長時間使用においては注意が必要です。


次回【後編】では、専用装置(AIRVO 2やInspiredフロー)について詳しく解説し、それぞれの機器の使い分けや注意点をまとめます。
この記事は、2025年3月時点でのものです。最新情報を入手次第アップデートいたします。
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