今回は、呼吸ケアの中でも注目が高まっている**ハイフローセラピー(HFNC)**について、従来の酸素療法とどこがどう違うのか、わかりやすくご紹介します。
1. 低流量酸素療法 vs. 高流量鼻カニューレ(HFNC)
一方でHFNCは、最大60L/分という高流量で酸素を供給でき、加温・加湿されたガスを通じて安定したFIO₂を維持しながら、呼吸をしっかりサポートします。
従来の酸素療法では、鼻カニューレや酸素マスクを使って酸素を供給します。これらは一般に1〜15L/分程度の低流量であり、吸気時には周囲の空気と混ざってFIO₂(吸入酸素濃度)が不安定になりやすいという特徴があります。
特徴 | 低流量酸素療法 | HFNC |
酸素供給方法 | 鼻カニューレ、マスク | 専用鼻カニューレ |
流量 | 1〜15L/分 | 最大60L/分 |
FiO₂の安定性 | 変動しやすい | 安定している |
加温・加湿 | 3L/分以下はなし | あり |
呼吸のサポート | 限定的 | 呼吸仕事量(WOB)の軽減 |
2. カニューレの形状の違い
HFNCで使用するカニューレは、従来のものと見た目からして異なります。
このように、HFNCカニューレには以下の特徴があります:
- 内径が大きく、高流量の酸素供給が可能
- 柔軟な素材で、鼻腔への圧迫感が少なく快適
- 長時間装着しても皮膚トラブルが起きにくい
患者さんの快適性と治療効果の両立に優れています。

上:HFNC用カニューレ(太く柔らかい)/下:従来の低流量カニューレ
3. 加温・加湿の重要性
HFNCの特徴のひとつが「加温・加湿された酸素ガス」を使える点です。
- 乾燥した酸素を吸入すると、気道粘膜が傷つきやすくなり、痰が粘くなって除去しにくくなる
- 加温・加湿された酸素により、気道の防御機能を維持し、分泌物の移動や除去もスムーズになります
- 小児や高齢者など、粘膜がデリケートな患者に特に有効です

撮影者;野口裕幸
4. NPPV(CPAP・BiPAP)との違い
HFNCと同じく呼吸補助に使われるものとして、”NPPV(非侵襲的陽圧換気)”があります。中でもCPAPやBiPAPは、陽圧をかけて積極的に呼吸を補助します。
項目 | HFNC | CPAP/BiPAP |
呼吸の補助 | 一部サポート(自発呼吸ベース) | フルサポート(陽圧あり) |
使用デバイス | 鼻カニューレ | フェイスマスク |
快適性 | 高い(会話・飲食可能) | 低い(密閉マスクの圧迫感あり) |
圧力サポート | なし(PEEP効果は一部あり) | 明確な陽圧サポートあり |
HFNCは軽〜中等度の呼吸不全や、NPPVが合わないケースでの選択肢となります。
5. 小児におけるHFNCの活用
小児においてHFNCは、特にその有効性が注目されています。
- 呼吸数が多く、気道が狭いため、低流量酸素では効果が不十分なことが多い
- 気道粘膜がデリケートで、乾燥した酸素によるダメージを受けやすい
- マスクを嫌がる子どもにも、カニューレなら受け入れられやすい
また、医療者の観察がしやすく、装着もシンプルなため、現場でも使いやすい療法です。
まとめ
ハイフローセラピー(HFNC)は、従来の酸素療法と比べて
- 高流量で安定した酸素供給
- 加温加湿による気道保護
- 快適で持続可能なデバイス設計
といった利点があります。
特に小児・高齢者・NPPVが難しい患者への呼吸管理において、今後さらに重要な役割を果たすでしょう。
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