ネブライザー付き酸素吸入装置は、十分な加湿が必要な開胸術後で喀痰喀出困難な患者などに適しています。よく「インスピロン」と言われますが、これは商品名なのですが、医療現場において普及していたため、一般的に「ネブライザー付き酸素吸入装置」のことを「インスピロン」と呼ぶことがあります。
ベンチュリーマスクと同様、ベンチュリー効果を利用してして、かつ、ネブライザー機能を備えたものです。ネブライザーの投与酸素流量は最低5L/分以上で、十分な効果を得るためには10L/分以上が必要です。
ネブライザー付き酸素吸入装置をマスクで使用する場合、呼気ガスと余剰ガスを流出させる側孔のついたエアロゾルマスクを用います。
一方、挿管チューブや気管切開チューブにて、Tピースとして用いる場合、装置から延びる蛇管の反対側に、15cm程度の蛇管を装着します。これは、吸気時に外気を取り込んで吸入酸素濃度が変化することを防ぐための役割をしています。
ネブライザー付き酸素吸入装置を用いるとき、ヒーターを使用することが可能で、その時の加湿器の水桶の温度は、30〜32℃に設定します。
ただし、空焚きに注意しなければなりません。空焚きにより火災の原因となりかねません。
なお、冷たいまま挿管チューブや気管切開チューブにて使用すると、冷たいミストが気道を刺激して、気道攣縮を引き起こす可能性があるので、よく観察しなければなりません。
ネブライザー付き酸素供給装置の原理は、酸素濃度調整ノブで酸素と室内機を混合し、加湿部分では、霧吹きの原理で微粒子化した蒸留水と混合酸素を混ぜています(図1)。

注意点
一般的に、病棟で使用される酸素流量計は最大で10〜15L/分のため、患者の吸気流量より多くガスを送るためには、総流量30L/分以上が必要であるため、その流量を確保する時の酸素濃度はおよそ50%です(表1)。したがって、ダイヤルに高濃度の目盛りがあったとしても、安定した50〜60%以上の酸素高濃度での吸入することはできません。特にインスピロンネブライザーでは、設定酸素濃度が70%と100%の間にダイヤルを調整しても、空気穴は閉塞されますので、供給される酸素濃度は100%で、投与される総流量は酸素流量計と同じになります(図2)。

安定した酸素濃度を送るには、緑色の部分の設定が必要となる

参考文献
- 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会 酸素療法マニュアル作成委員会,日本呼吸器学会 肺生理専門委員会編:酸素療法の実際.酸素療法マニュアル,メディカルレビュー社,東京,2017,
- スキルアップセミナー 酸素療法の基礎からハイフローまで, 野口裕幸, 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌, 32(2024)3号p.288-292
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