急性冠症候群(acute coronary syndrome: ACS)とは、心臓の冠動脈が詰まったり狭くなったりして、心臓の筋肉が壊死を起こす状態です。急性心筋梗塞や不安定狭心症が含まれます。
ACSに対して、現時点において、初期治療における酸素投与は、低酸素血症(酸素飽和度90%未満)または心不全徴候のある患者に対して酸素投与を行う1)とされていますが、最近の報告によると、低酸素血症のない患者への酸素投与の有効性は否定されています。したがって、ルーチンの酸素投与は推奨されていません。また、来院後6時間の酸素投与についても、低酸素血症や心不全がなければルーチンでの酸素投与は行わなくて良いです。
血中酸素濃度が正常範囲を超えると、1)冠動脈攣縮を引き起こす可能性、2)活性酸素産生が増加する可能性、3)再灌流障害を増悪させる可能性が報告されており、また、酸素吸入では冠動脈血流低下や血管抵抗の上昇、再灌流障害が生じるという報告もあります2)。
参考文献
- 急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版)https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2018/11/JCS2018_kimura.pdf, 2025.2閲覧
- Momen, Am J Physiol Heart Circ Physiol 2009;296:H854–61
関連記事