1.経鼻カニュラによる酸素療法

【はじめに】

呼吸不全の患者に対する酸素療法は基本的なケアの一つです。
本記事では、新人看護師さん向けに、鼻カニュラを使用した酸素投与のポイントを整理します。

鼻カニュラとは

鼻腔にプロングを挿入し、酸素を投与するデバイスです。
口腔はフリーなため、酸素投与中も会話や食事が可能です。

酸素流量と吸入酸素濃度の目安

酸素流量は通常、0.5〜6L/分の範囲で設定されます。
吸入酸素濃度(FiO₂)は患者の1回換気量により変化しますが、以下に大まかな目安を示します。

酸素流量(ℓ/分)吸入酸素濃度%
(目安)
24
28
32
36
40
48

参考文献1より引用

主な使用例

  • 軽度呼吸不全患者
  • 術後患者の酸素療法
  • 在宅酸素療法(HOT)など

幅広い臨床場面で使用される、基本的な酸素療法ツールです。

装着と管理のポイント

  • カニュラの先端を鼻孔に軽く差し込み、耳の後ろにチューブをかけ、顎下で長さ調整します。
  • 耳の後ろの皮膚トラブルを予防するため、パッドやガーゼを挟む工夫をしましょう。
  • 鼻出血や粘膜乾燥がないか、定期的に観察します。
  • 流量設定ミス(1L/分未満、6L/分超え)に注意し、適切な範囲内で使用しましょう。

注意点

  • 口呼吸が主体となる患者には鼻カニュラは適しません。
  • 口呼吸患者への鼻カニュラ使用は、効果的な酸素投与が得られない場合があり、
    その場合は開放型酸素マスクなどの選択を検討します。
  • 低換気時には、吸入酸素濃度が想定よりも高くなる可能性があるため、特に注意が必要です。

📝コラム:低流量用酸素流量計について

通常の酸素流量計は1L/分単位で調整されますが、
低流量用酸素流量計0.5L/分刻みで細かく設定することができます。
特に、
 ・ COPDなど慢性呼吸不全患者
 ・ 高齢者や小児など低換気の対象患者
において、過剰酸素投与のリスクを避けるために重要な役割を果たします。

【まとめ】

鼻カニュラは患者さんの自由度を保ちつつ、柔軟に酸素投与ができる重要なデバイスです。
ただし、患者の換気状態や呼吸パターンに応じた使い分けが必要であり、
適切な装着、流量設定、観察が不可欠です。

参考文献

  1. 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会 酸素療法マニュアル作成委員会,日本呼吸器学会 肺生理専門委員会編:酸素療法の実際.酸素療法マニュアル,メディカルレビュー社,東京,2017,
  2. スキルアップセミナー 酸素療法の基礎からハイフローまで, 野口裕幸, 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌, 32(2024)3号p.288-292

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