High Flow Nasal Cannula に関する新しい概念モデル
Concept proposed by Hiroyuki Noguchi (2026)
HFNCは酸素療法のように見えますが、その本質は「Flow」によって呼吸を補助する治療にあります。本稿では、その作用を Flow Assist & Flow Resistance という視点から整理します。
HFNCの特徴 = Flow Assist & Flow Resistance
HFNCの特徴として、従来は次の5つが挙げられています。
- 肺胞まで安定したFiO₂の供給
- 上気道死腔のCO₂洗い流し
- PEEP様効果
- 加温加湿による快適性
- 呼吸仕事量の軽減
また、その特徴を活かす方法として Flow Matching が提唱されています。
安定したFIO2供給、死腔の洗い流し、加温加湿などは、吸気ガスの流量と濃度によって説明できます。一方で、いわゆる「PEEP様効果」については、本当に肺胞レベルでPEEPが発生しているのか疑問がありました。
EITなどの観察では、HFNCによりFRC(機能的残気量)の増大が確認されています。しかし、この増大は鼻咽頭で測定されるPEEP圧とは必ずしも一致していません。
そこで考えたのが
「Flow Assist & Flow Resistance」という概念です。
HFNCでは吸気時に、患者の吸気努力(デマンド流量)よりも高い流量が供給されます。
これにより吸気は容易になり、Flow Assistとして働きます。
一方、吸気が終了しても高流量は持続しているため、呼気流量に対して抵抗が生じます。
この呼気に対する抵抗を Flow Resistance と考えることができます。
この呼気抵抗により呼気終末に肺内ガスが残りやすくなり、
結果としてFRCの増大につながると考えられます。
その結果、肺胞のリクルートメントが促進され、換気血流比の改善→呼吸数の低下につながると考えられます。

つまりHFNCの特徴は、単なるPEEP様効果ではなく、
Flow Assist(吸気)
Flow Resistance(呼気)
という Flowによる作用として理解することができます。
着想の背景
この概念を考察するきっかけとなったのは、自身でHFNCを体験したことと、その際に計測したEIT(Electrical Impedance Tomography)の結果、さらに患者からの訴えでした。
自身の体験では、安静時の呼吸(おそらく吸気Flowは30〜40 L/min程度)に対して、HFNCの流量を30 L/min、40 L/min程度に設定しても、呼吸には大きな変化は見られませんでした。
しかし、流量を50 L/min、60 L/minと上げていくと、呼吸様式が前胸部優位の呼吸から腹式・背側優位の呼吸へと変化し、それに伴って呼吸回数が減少することが確認されました。
また同時に、EITの電位分布にも変化が見られ、換気分布が変化している可能性が示唆されました。
一方、臨床ではHFNCの流量を上げた際に、患者から「吐きにくい」という訴えが聞かれることがあります。また、流量を上げても期待した効果が得られない症例も経験しました。
これらの体験と観察から、従来説明されてきたHFNCの特徴だけでは、この現象を十分に説明できないのではないかと考えるようになりました。
そこで、HFNCの作用を呼吸サイクルの観点から整理し、
吸気における Flow Assist
呼気における Flow Resistance
という概念にたどり着きました。
したがってHFNCは、単なる酸素療法ではなく、
「Flow」によって呼吸を補助する治療として捉えることができると考えています。
本稿で紹介した Flow Assist & Flow Resistance という概念は、HFNCの作用をFlowという視点から整理した概念モデルです。これは従来のHFNCの作用機序を否定するものではなく、むしろそれらを理解しやすくするための補完的な枠組みと考えています。
今後、臨床研究などによる検証が進むことで、HFNCの作用の理解がさらに深まることを期待しています。
