酸素中毒は、多すぎる酸素(高濃度の酸素)の投与により起こりうる合併症のひとつです。 酸素フリーラジカル(活性酸素)による細胞あるいは組織の障害が主要因です。高濃度酸素投与(>80%)を12時間以上吸入した場合に気管・気管支炎症状と肋骨下に疼痛が出現するとされています。
酸素中毒の発生は酸素分圧(PO2)と酸素吸入時間に影響されます。吸入酸素濃度(FIO2)が高くなれば、それに伴い肺胞気や血中、細胞でのPO2が上昇し、酸素中毒が生じるとされていますが、FIO2と吸入時間の関係(酸素中毒の発生の閾値)は明らかになっていません1)。
酸素中毒の症状は、気管・気管支炎や胸骨下疼痛以外に、肺活量低下、肺コンプライアンス低下、肺胞―動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)増加、運動時低酸素血症、肺拡散能低下などが挙げられます。
酸素中毒の基本病態は、抗酸化防御機構の処理能力を上回る活性酸素産生(直接的傷害)と肺へ集積して活性化された炎症細胞からの炎症性メディエーター、サイトカイン、フリーラジカルなどの放出(間接的傷害)による肺傷害とされています。
FIO2が0.6以下であれば酸素中毒は生じにくいとされています。そのため、酸素中毒の予防には、酸素投与下での酸素化の目標値をPaO2で60〜70Torr(SpO2で90〜93%)として、可能な限りFIO2を低下させることを確認します。
参考資料
1)酸素療法NAVI、監修;横山俊樹、https://www.atomed.co.jp/openfacemask/column/10/
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