呼吸療法とは

1.呼吸療法の概要

呼吸療法とは、何らかの原因で呼吸機能が障害された患者に対して、適切な酸素療法や、換気の補助を行う治療のことを指します。慢性閉塞性肺疾患(COPD)や喘息、急性呼吸不全などの患者に対し、幅広く実施されています。

2.呼吸療法の種類

呼吸療法は、大きく分けて以下のような種類があります。

(1)酸素療法(Oxygen Therapy)
動脈血酸素分圧や血中酸素飽和度が低下している患者などの患者に対して、酸素を投与する治療法です。鼻カニュラやマスクなどを用いて酸素を供給し、低酸素血症の改善を図ります。近年Covid-19の感染拡大に伴い、急速に普及したハイフローセラピー(High Flow Therapy ; HFT)もこの治療法に含められます。
(2)人工呼吸療法(Mechanical Ventilation)
人工呼吸器を使用して、患者の呼吸を補助または代行する治療法です。神経筋疾患や、重症呼吸不全、あるいは大きな手術の術後管理などにおいて不可欠な治療法です。
(3)陽圧換気療法(Positive Pressure Ventilation ; PPV)
空気および酸素の混合ガスを、陽圧で肺に送り込む呼吸療法のひとつで、CPAP(Continuous Positive Airway Pressure;持続気道陽圧)やNPPV(Non-invasive Positive Ventilation ; 非侵襲的陽圧換気法)があり、軽度の呼吸不全や睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome ; SAS)に用いられます。
(4)気道クリアランス(Airway Clearance Therapy)
痰などの気道内分泌物を除去するための療法で、カフ排痰療法(Cough Therapy)や肺内パーカッション(Intrapulmonary Percussive Ventilation ; IPV)、あるいは体外式陽陰圧人工呼吸(Biphasic Cuirass Ventilation ; BCV)などを用い、気道の浄化を図り、気道閉塞の予防や、無気肺・肺炎などの予防に用いられます。
(5)リハビリテーション(Pulmonary Rehabilitation)
運動療法や呼吸筋訓練などを通じて、患者の呼吸機能を向上させるプログラムで、特にCOPD患者において有効とされています。

3.日本における呼吸療法の現状

日本では、高齢化に伴い呼吸器疾患が増加しており、呼吸療法の重要性が高まっています。医療機関では、医師をはじめ、看護師、理学療法士、臨床工学技士など他職種が連携しながら治療を行っています。 また、在宅医療の普及により、在宅酸素療法(Home Oxygen Therapy ; HOT)や在宅人工呼吸(Home Mechanical Ventilation ; HMV)が広がっています。特にHOTは長期的な酸素供給が必要な患者にとって重要な支援となっています。

4.課題と展望

呼吸療法の課題としては、医療資源の確保や患者の負担軽減、また医療従事者の教育などが挙げられます。残念ながら国産の人工呼吸器はほとんどなく、海外製品に頼っているのが実情です。
特に、在宅HFTやNPPVの適用範囲の拡大や遠隔医療の連携が求められています。 将来的にはAIやIoT技術を活用した呼吸管理システムの開発が進み、より効果的な治療が提供されることが期待されています。