【はじめに】
私たちが吸い込んだ酸素は、肺で血液に取り込まれ、全身の細胞へと届けられます。
では、その酸素はどのようなかたちで血液中を移動し、どのくらいの量が運ばれているのでしょうか?
【酸素の運搬方法:2つのかたち】
血液中の酸素は、以下の2つの形で存在しています。
- ① ヘモグロビンと結びついた酸素(Hb結合型酸素)
- ② 血漿に物理的に溶けた酸素(溶存酸素)
では、どのくらいの量が運ばれているのでしょうか?
【酸素含量(CaO₂)とは?】
単位体積(100 mL)あたりの動脈血に、どれだけ酸素が含まれているかを示す指標が酸素含量(CaO₂:arterial oxygen content)です。
酸素は、以下の2つの形で運ばれます:
- ヘモグロビン結合型酸素
ヘモグロビン1gあたり約1.34 mLの酸素を運搬します。
酸素飽和度(SpO₂またはSaO₂)を掛けることで、実際に結合している割合がわかります。
【式】1.34 × Hb(g/dL) × SaO₂(%) / 100 - 溶存酸素
血漿100mL中に溶けている酸素の量で、酸素分圧(PaO₂)に比例します。
【式】0.003 × PaO₂(mmHg)
よって、CaO₂ の計算式は:
CaO₂(mL/dL)= 1.34 × Hb(g/dL) × SaO₂(%)/100 + 0.003 × PaO₂(mmHg)
【具体例】
Hb = 15 g/dL、SaO₂ = 98%、PaO₂ = 90 mmHg のとき:
→ CaO₂ = 1.34 × 15 × 0.98 + 0.003 × 90 = 19.7+0.27 ≒ 約20 mL/dL
このように、酸素含量のほとんどは「ヘモグロビンに結合した酸素」で構成されており、約98〜99%が結合型酸素、残り1〜2%が溶存酸素であることがわかります。
【まとめ】
酸素は、ほとんどがヘモグロビンと結びついた形で血液中を移動しています。
溶存酸素もゼロではありませんが、臨床的には主にヘモグロビンの状態(Hb量・酸素飽和度)が酸素運搬能力に直結します。
この「酸素含量(CaO₂)」という考え方は、後に学ぶ「酸素供給量(DO₂)」や「酸素消費量(VO₂)」といった呼吸・循環のバランス評価の基盤になります。
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