鉄の肺は、1929年に米国ハーバード大学のPhilip Drinkerらによって開発されました。頸部より下を気密性を保ったタンクに入れ、タンク内の圧を大気圧より低くして肺を膨らませ(吸気)、圧を大気圧に戻し(呼気)、これを繰り返すことで換気を維持します。

このビデオは、2017年4月、東京国際フォーラムにて開催された、第57回日本呼吸器学会学術集会(会長;中西洋一)の医療機器や製薬会社などの展示ブースにおいて展示された「鉄の肺」(静岡市立静岡病院所有)を、体験させていただいた時の映像です。

鉄の肺は、1950年代、欧米を中心に流行したポリオによる呼吸不全に対して実用され、多くの患者に用いられました。写真は、1953年に撮影された、米国カリフォルニア州ダウニーにあるランチョ ロス アミーゴス国立リハビリテーションセンター(Rancho Los Amigos National Rehabilitation Center )の講堂にいる鉄の肺を装着した患者です。

しかし、鉄の肺を用いた胸腔外陰圧型人工呼吸器による治療での死亡率は87%であったのに対し、気管切開、バッグ換気による侵襲的陽圧呼吸群では40%と著名に改善されていることが明らかになり(Lancet 1953; 1: 37-41.)、その後侵襲的陽圧呼吸管理(現在の陽圧式人工呼吸器)が開発されていきます。